雲母の世界
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077:大暴れ

碧谷 明




びゅぉぉぉおおおお……

「何だか知らないが、今日はやけに風が強いねェ」
 こんな日は外に出る気にもなれないよ、と瑠璃華は顔をしかめた。と、その時――

ドンガラガッシャ~~ン!!!!

「今日は霹靂も凄いみたいですね~」
 のほほんと渋茶をすする浅葱を、瑠璃華は無言で睨みつけた。霹靂と聞いて何だかものすごく嫌な予感がしたのだ。例えば、この悪天候の原因が誰かさんだとか誰かさんだとか誰かさんだとか……
「知らない……アタシは何も知らない……気付いてなんかない……」
「瑠璃華サン? なんか現実逃避しようとしてません?」
 思わず小声でぶつぶつと唱えていると、怪訝そうな顔をした浅葱にツッコまれた。
「あ、ひょっとして瑠璃華サン霹靂ダメなんですか? 大丈夫ですよ~ちゃんと結界張ってますもん、落ちたりしませんって☆」
「やぁだ、お姉ちゃんったら霹靂苦手なのぉ~? あんなの怖くもなんともないジャン!」
 更に的外れな言の葉を吐く浅葱とすかさず囃したてる玻璃音に、
「ンな訳ないだろッ!!」
と怒鳴りつつ瑠璃華は頭を抱えたのだった――


「霹靂も操れん軟弱者がッ! いい加減に諦めたらどうだ!!」
「兄上の方こそ! そろそろ諦められては如何です!?」
 大内裏は後宮、雷霆と霸霧帝の兄弟は、は、盛大にやりあっていた。慣れた者には見慣れた光景といえなくもない。もっとも、ここまで激しいのは十年に一度あるかないかといったところだが。しかしながら場所が場所である。
「主上! お止め下さい!!」
「あの男、恐れ多くも主上に何ということを……ッ!」
「いや、それ以前に此処を何処と心得ておるのだ!?」
 事情を知らぬ臣等が口々に騒ぎ立てる。国母の后と東宮と姫宮、それに国母の后の親兄弟で殿上を果たしている者達は見慣れているだけに何処吹く風、といった風情だ。
「お兄様v 此度は叔父様とお父様、どちらが勝たれるとお思い?」
「そうだな……父上の方が叔父上より狡猾なところがおありだから……やはり父上ではないか?」
「……成程、お兄様はお父様にお賭けになるのねv」
「あははははそうだね賭けてもいいよ♪」
「ちょっ……姫宮っ!! なんですかはしたない! 東宮もノらないで下さい!!」
 あまりといえばあまりなやりとりに、東宮傅たる夜半の君は頭を抱えた。……まァ二匹の気持ちは分からなくもなかったのだけれど……
「まぁまぁ、兄上、落ち着いて……」
「そうそう、主上も疾黒の御方も、そのようなコト気になさいませんわv」
 なだめにかかった己が弟と国母の后の言の葉に、夜半の君は軽い頭痛さえ覚えた。しかも……
「諦めろ」
 父である左大臣が、ぽむ、と肩に手を置いて満面の笑みで放った言の葉に、夜半の君はがっくりとうなだれ、半ばいじけなぶつぶつと呟いた。
「苦節ン十年……私がお育てした東宮は……東宮をそのようにお育てした覚えはないというのに……一体どうして……」
「あぁ、それは多分叔父上のせいだね☆」
「…………………………あのオッサンが………………ッ!! 姫宮ッ! 主上に全財産張らせて頂きますッ!!」
「「「「「ぁ、キレた……」」」」」
 温厚で鳴らした夜半の君の、世にも珍しい姿に、自分達があおっておきながら一同はやや呆然とする。
「っていうかぁ~全員お父様に張ったら賭けにならないんですけど~?」
「「「あ、じゃあ、私が大穴・疾黒の御方に張りましょう」」」
 いち早く我に返った姫宮の言の葉に、まだ賭けていなかった三匹が即答する。
「で? 毎度のことながらそもそも原因は何なのです?」
 今の今まで、敢えて誰も尋ねようとはしなかった疑問を、左大臣があっさりと口にした。
「あぁ、それは私の局に疾黒の御方が遊びにいらしていて……それで丁度膝枕をして差し上げていたところに主上がお渡り遊ばしたのですわv」
「……………………つまり? 主上がおキレ遊ばしたのですか?」
 国母の后のあまりといえばあまりのいいように、左大臣は己が娘ながらやや愕然として先を促す。
「ん~~ある意味ではそうでしょうねぇ……疾黒の御方の想い匹のことを名指しなさって、その方にして貰えというようなことをおっしゃってらっしゃいましたしv」
 あらゆる意味で最も強いのは、実は国母の后なのかもしれなかった。

「……ッ……い~っ加減に、しろっっ!!」
「そうですねェ……雫羽の賭けも上手く成立したようですし……」
「…………………………は??」
 しれっとした顔で返された言の葉の意味が分からず、雷霆は状況を忘れて呆けた。
「いえ、何でもありませんのでお気になさらず☆」
 満面の笑みでそう告げられて、気にせずに居れよう筈が――
「と、いう訳で私の負けです☆」
「ん、良し!!」
 基本的に雷霆は深く考えない性質(タチ)なのだ。自ら負けを認めた霸霧帝をどうこうする気持ちなど欠片も持ってはいなかった。
「わざわざウサ晴らしに付き合って下さって、本当に感謝していますよ、兄上v」
 霸霧帝がそう呟いたことなど、雷霆の耳には全く届いておらず、更にいえば、己に張った者達の賭け金は全額霸霧帝のものとなったのだった――




いやぁ、長かった……
始めは「大暴れ=兄弟喧嘩」だったのですが、気付いたらいろんなヤツがあらゆる意味で「大暴れ」してました(^^;)ゞ
でもまぁ、これはこれでアリかな~と思ったのでタイトルは結局「兄弟喧嘩」ではなく「大暴れ」です☆



碧谷 明

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