雲母の世界
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雲母少年探偵団 ④

碧谷 明




「お蔭様で、異常気象も解消されたようですよ。お疲れ様です、兄上」
再び内裏、雷の間。霸霧帝は今回の陰の功労者である、雷霆を労っていた。労われている側の雷霆はというと、だらしなく寝そべったままで瓶子を傾けていた。山で異形を倒していた時間などなかったかのようだ。
「そうそう、兄上にお聞きした異形の容姿を元に調べさせたのですが……どうやら『ひい(*)』というようですね。これが出るとその国は大旱魃に襲われ、大恐慌を来たすと、そう文献にあったそうですよ」
「フン。どーっだっていいさ、そんな事」
のんびりと告げる霸霧帝に、雷霆はダルそうに言の葉を返す。相変わらずのやる気のなさだ。
「とにかく、この異常気象の要因としてこの名を発表する事にしました。どう対処したかは適当にごまかしますよ。兄上の霹靂のお蔭で死体すらまともに残ってなかったそうですからね」
臣下にしてみればだったらどうやって調べたのか、何より内裏から出ていない霸霧帝がなぜそんな事を知っているのかが気になっただろうがそれはさておき。
「どうだっていいと言っているだろうが。とにかく俺は疲れたんだ、昼寝でもするからさっさと行けよ」
疲れの為か眠気の為か、雷霆はそっけなく霸霧帝を追い払い、やっと瓶子を離して爆睡したのだった――。


あの山の一件からしばらくして、朝廷から発表があったらしい。あったらしいっていうのは俺たちには直接関係ないからだ。俺たちはまだ子供だったし、何より、あの山の一件のことでお仕置き中だったんだ。
「『ひい』、って言うんだってさ、あの異常気象の原因」
そう教えてくれたのは瑠璃華さんだった。
「それと、アンタの友達の河童の子、元気になったって」
そう微笑んで教えてくれた瑠璃華さんの顔はすごく印象的で……


「アレが原因だったんだよなァ……」
あの一件の後、轂焔は猛勉強して検非違使になったのだ。他ならぬ瑠璃華を守る為に。あの印象的な微笑みを守る為だけに。




*『ひい』の『ひ』は『肥』、『い』は『虫へんに遺』と書く。



碧谷 明

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