雲母少年探偵団 ①
碧谷 明
随分と長い筈の年月だが、案外短く感じられる。
そう、
「あっぢぃ～」
うだるような暑さ。雨なんてもう何日も降ってない。友達の河童の露ちゃんなんて、意識不明の重体だ。頭の皿が乾きかけててヤバイんだって。
「な～涅っち～」
「あ～？」
いくら親友の山っちが遊びに来てくれたって、こう暑くちゃあ遊ぶ気にもならない。
「なんだよぅ面白そーだからわざわざ誘いに来てやったってのに。んないーかたすんのなら教えてやんないからな！」
……現金なもので、そうこられると知りたくなる。猫の
「あっズルイ!! 暑くて退屈でこっちはもー死にそーなんだぞ！」
「知るもんか！ 自業自得だよーっだ！」
「だっから悪かったってー。山っちだって
一匹じゃあ何やったってツマンナイもんな。いくら山っちが拗ねてみせてたって、本音はつきあって欲しいに決まってるんだ。
「……しょうがないなぁ涅っちがどーしてもってゆーからトクベツに教えるんだぞ？」
「うんうん分かってるって～」
「実はさー、なんか最近ウチの山荒らされてんだよねー」
「って、そんなの山っちのトコのおじさんとおばさんが何とかする筈だろ!? 俺らにはカンケーねーじゃんか！」
「ところがそーじゃないんだよな。実はさー、雨降らなくなった頃からなんだ、ソレ。絶対何かカンケーあるって。露ちゃんの敵討ちに、俺らで退治しちゃおうぜ！」
敵討ち――そう言われちゃあやっぱり気になるよなぁ。
「よ～し、やってやるか!!」
こうして、俺たちは露ちゃんの敵討ちに山へと繰り出すことになったんだ。
「で？ どーすんだこれから」
とりあえず山には来たものの、ぜんっぜん情報なくちゃあ動けないっての。
「んーなんかけっこう神出鬼没らしいんだよね」
「俺ヤだぞこのクソ暑いなか張り込みなんて」
「そりゃ俺だってヤだけどさー、他にどーすりゃいいんだよ？」
山っちは困ったようにこっちを見てるけど、そんなのは手は一つ、だよな。
「ばっかだなぁ、そんなの、決まってるだろ？ おびき出すんだよ！」
「どーやって？」
「だっからそれを今から考えるんだって！」
「分かった。じゃあ早く考えようぜ!!」
それから、山っちと二匹で考えながらあれこれしゃべってたら、同じくナワバリ荒らしを探していたらしいおじさんとおばさんに見つかってこっぴどく叱られちゃった。ま、だからってやめる気はなかったんだけどね。だって露ちゃんの敵討ちだし。何より、俺だってもう暑いのヤだもんな。
「こないださー、ウチ帰ってからも延々叱られちゃったんだよね～」
「あー……そーだよなー山っちはウチでもおじさん達と一緒だもんなぁ」
「んーでも要は見つかんなきゃいい訳だし」
「じゃ、とにかく今日は見つかんないよーにしないと」
それで、二匹でこんな作戦を立てたんだ。
まず、雨が降らなくなったからにはイヨーに水が好きか嫌いかのどっちかだと思うんだよね。だから水を用意すれば何かしら反応がある筈なんだ。でも今水はなかなか手に入んないだろ？ だから――。
「涅っちが顔を洗えばいいんだよ!!」
「いや、それで降ったら今ごろ露ちゃん元気だって!!」
ってゆー訳で、結局山っちに蜃気楼作ってもらうことにしたんだ。山の中なら家みたいなモンだから、山っちけっこー何でもできるし。ま、蜃気楼ぐらい朝飯前ってことで。
とにかくそんな訳で、そのままちょっと様子を見てみることにしたんだ。
「なー涅っちーホントに来んのかなー」
「来るに決まってる！ っつーか来なきゃ困るだろ!?」
と、その時。木々のざわめきと共に何かが空から降り立とうとしていた。
「なっ!?」
「ってーか暑ッ!!」
はっきり言って暑いどころの騒ぎじゃあない。なにせ、ここんとこの暑さと水不足で乾燥しきってた立ち木が自然発火しだすくらいだ。
「逃げるぞ!!!」
ボーっとしてたら火に巻かれかねないし、山っちと俺は慌てて逃げ出したんだ。でも子供の足じゃあたかが知れてるってもんで、やっぱり火の勢いの方が強かった。
「どーしよー、涅っち！ 囲まれちゃったよ!!」
四方を火に囲まれて、抜けられる
「この辺の草切って山積みにしてこっち側から火をつけるってのは!? 確かそんな話あっただろ!!」
「無理だよ、こんなに近くちゃあ！ あれはまだ火に勢いがあんましない時に有効なんだ!!」
もう、二匹とも半泣きだった。
碧谷 明
